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た​と​え​こ​の​ま​ま

by k.TAMAYAN

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about

メンヘラ女子のポエムコア

lyrics

薄暗い部屋に閉じこもって私はひたすらシューゲイザーを聴いている。
シューゲイザーというのはロックの一ジャンルだ。
ノイジーでエフェクトの過剰にかかったギターの音が部屋の中に響き渡る。
実は今日、バイトをクビになった。
私のただ一つの収入源。
いや、一応親の仕送りもある。
でも、収入の半分はバイト代だ。
私は飲食店で2年ほどバイトをしていた。
しかし、近頃メンタルの調子が悪く、とうとう無断欠勤をしてしまったのだ。
飲食のバイトで無断欠勤はかなり痛い。
そういうわけで、私は無職同然となった。
大学にも、3ヶ月は行っていない。
部屋には酩酊感のあるギターの音が鳴り響いている。
その響きは、私の心象と絶妙にマッチしていて、ほんの少し救われたような気持ちになる。
いい加減、精神科の受診を考えなければならないのだが、そんなお金もない。
手詰りだ。
今はインターネットを見る気にもなれない。
私の数少ない娯楽。
それすら、今は鬱陶しく感じる。
なんでもいいから救いがほしい。
手を差し伸べてくれる誰かが欲しい。
私には恋人がいない。
友人も少ないし、最近はほとんど連絡も取っていない。
なにせ学校に行っていないのだから、会う機会がないのだ。
お腹が空いたので、近所のコンビニまで歩いて行く。
外は冷え切っていて、冷たい風が私の肌を容赦なく刺していく。
飲み会帰りの大学生たちが騒いでいる。
私はそれをひどく鬱陶しく感じる。
彼らはどうしてあんなにも楽しそうなのだろう。
私にはわからない。
コンビニでサンドイッチを買って食べる。
ついでに寒空の中、喫煙所でタバコを吸う。
外でタバコを吸うのが私は好きだ。
煙がいい感じに冷やされて、美味く感じる。
それにしても大学生たちが騒がしい。
早く何処かへ行ってしまえばいいのに。
なんだか眠くなってきた。
ウイスキーを少し飲んだからかもしれない。
タバコを吸い終わると、私はまた寒空の中部屋へと帰る。
音楽をかけたまま布団をかぶる。
でも、一向に寝られる気配はない。
台所に行って、もう一本タバコを吸う。
私はゴールデンバットが好きだ。
なにより安いし、それなりに美味い。
とにかく寝たかったので、ウイスキーをもう一口飲む。
こういう時は酔っ払ってしまうのが一番だ。
収入が半分になった今、こんな生活を続けられるのもあとわずかだろう。
そう思うと、無性に寂しくなった。
と、その時だ。
部屋が微かに揺れ始めた。
次第に揺れが大きくなり、家具がガタガタと音を立て始める。
それは数十秒ほど続いたあと、何事もなかったかのようにおさまった。
思わずテレビをつける。
ニュースでは、速報で地震について報じている。
どうやら、隣の県でそれなりに大きな地震が起きたようだ。
ここも震度4以上はあったらしい。
ああ、こんなもんか。
私は少し失望する。
いっその事、隕石でも落ちて世界が滅びてしまえばいいのに。
でも、現実に起きるのは家具も倒れない程度の地震だけだ。
不謹慎だな。
でも、そのくらい私は今行き詰っているのだ。
そんなことを思っていると、目の前に私が現れた。
文字通り、もう一人の私自身が。
彼女はにやにやとした笑みを浮かべ、こっちを怪しげな目で見ている。
「笑えるね」
口を開いたのは向こうだった。
「そんなに病んでいるなら、死んでしまえばどう?」
彼女は不気味な笑みを浮かべてそう言った。
死、か。
そういう手も、無くはない。
でも、それは私の選択肢の外にあった。
「それとも、死ぬ決心もつかないのかな?」
「違うよ。まだ、死ぬほどじゃない」
「じゃあ、生きる手立てを見つけなきゃ」
「わかってるよ」
「わかってるならなぜ何もしないの? ウイスキー飲んでタバコ吸ってる場合?」
「わかってるってば」
「わかってないよ。あなたは、何もわかってない」
「うるさい、とっとと消えろ」
私がそう言うと、もう一人の私はにやにやとした笑みを浮かべたまま消えてしまった。
ああ、とうとう幻覚まで見るようになったか。
私も落ちるところまで落ちたな。
そう思っていると、また私の声が聞こえてきた。
「死んじゃいなよ」
私はそれを無視して、布団をかぶる。
「死んじゃいなよ」
声は止まない。
「死んじゃいなよ」
「うるさい!」
私は飛び起きた。
そのままコートを羽織り、外へと飛び出す。
「死んでやるものか」
いつの間にか、そんな言葉が口をつく。
夜の街は寒い。
でも、そんなことはもうどうでもいい。
たとえこのまま、朝が来なくても。

credits

released January 25, 2017
gt,ba:k.TAMAYAN

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about

k.TAMAYAN Ishikawa Prefecture, Japan

1992年石川県金沢市で生まれる。
2005年ごろから独学で音楽制作を開始。
2009年よりニコニコ動画を中心に「k.TAMAYAN」名義で活動を開始。動画視聴者から「手書きノートP」の異名を与えられる。
同年9月、小松市立高校の文化祭にてギターによる弾き語りで初のライブ出演を果たす。以降、高校・大学のイベントで弾き語りによるライブ出演を続ける。
2012年にはオリジナルバンド「終末時計」を結成し、筑波大学内を中心にライブ活動を開始。
2017年、終末時計を解散し、AMAX MUSICより「玉谷研太」名義での活動を開始。同年6月、鎌倉FMのラジオ番組にゲスト出演。

また、同年6月7日にAMAX MUSICより、シングル「21世紀の怪物」をリリース。
2018年5月15日より、Vtuber「渚乃奏」の運営を開始。
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