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世​界​は​こ​こ​だ​け

by 玉谷研太

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1.
誰かに加工されまくった 売れない女優の写真を ぼんやり見つめる僕は 売れないミュージシャンだった 今日も仕事でミスをした ノルマは特にないが 結局自分が損して 赤字が一つ増える 払えない奨学金と 毎月の薬代と 治らないパニック発作と 祝えない誕生日と ねえ 君はどこで 今 どうしてるの ほら あの日みたいに 僕に笑ってくれ 25歳の誕生日 病院で君を見た 疲れた顔をして 僕から目をそらした 変わらないあの声と だいぶ伸びた髪の毛と 知らんふりする仕草が 懐かしくて怖かった 結婚してく友達が 一人ずつ増えてく日々 「おめでとう」と言いながら 寂しさが募っていく 別れて8年経つ 君のことを引きずって 情けないと知りながら 好きだと言いたくなる ねえ 君と僕は もう 戻れないね でも 少しでいい 何か答えてくれ 25歳の誕生日 病院で君を見た やつれた顔をして 診察室を出てきた 白髪の増えた僕と 治らない君の病気と 変わらないこの気持ちが どうにも悲しかった 25歳の誕生日 僕はまた年をとった 25歳の君は 変わらず愛おしくて どこで間違えたんだろう 何を間違えたんだろう 答えは出ないけれど きっと僕が悪かった どんなに喧嘩しても 酷いことを言われても どうして君のことを 愛してしまうのだろう
2.
君に殴られた夜 頭がぼんやりして なぜか考えたくもないこと いくつも浮かんだ そしてまた出会う日まで 僕らは銃を下ろす いつか幸せになれる時まで 時計を見つめる 君がいない世界を望んだ日 美しい悪夢も終わったよ 愛を歌う機械の声がする 僕がつぶやく言葉をかき消して 悲しみを分かち合って 喜びに泣いたあの日 君の記憶の奥に埋もれてる 感情を探した 僕がいない世界を望んだ日 新しい悪夢が始まった 恋を歌う機械の声がする 君の頬に涙が伝うように 無機質な待合室 返事をするその声は 僕の頭の中をかき乱す 寂しげな調べだ 黙って目をそらした 一言も語らぬまま そして再び顔を合わすまで 僕らはすれ違う 愛を語る言葉をなくしても 巡り会う輪廻は止められず 僕が歌うあの日のラブソング 君の耳にはたぶん届かないな だから歌う僕らのラブソング ラララララ 今日も歌うあの日のラブソング 君の胸にはたぶん響かないな 君のもとにはたぶん届かないな
3.
生きるのに疲れた日の午後は 自殺を考えては否定するよ 涙をこらえる僕の瞳には いつもの青空が写っていた ああ 不幸にはなりたくないよね ああ こんなはずではなかったのに 家に帰ってもひとりきりで 自分の世界に引きこもるよ 誰も寄せ付けないふりをして 本当は分かって欲しかった ああ そして今日も日が暮れるよ ああ 誰も気づいてはくれない 僕の願いは大したことじゃないのに 叶わないのは僕が悪いんだろうか 人並みの幸せとささやかな苦労の中で 生きていたいというのは許されないのか 死ねない弱さを嘆きながら 笑顔を振りまきナイフを出した 全部僕が悪いと言い聞かせ 物陰で静かに血を流した ああ 何をしても辛いままで ああ 誰も分かっちゃくれない 僕の願いは大したことじゃないのに 叶わないのは僕が悪いんだろうか ささやかな苦しみとくだらない幸せの中で 生きていたいというのは我がままなのか 僕の願いは大したことじゃないのに 叶わないのは僕が悪いんだろうね そうだろ こんなにも苦しんでまで生きていく意味が分からずに 死を選ぶことすら僕には許されないのか ああ 落ち着いて 辺りを見渡せば ああ みんなが困ってた 家族も友達も ああ 本当は誰だって 自分を責めたくないからね 切れた手首から流れた血はとても赤くて 嫌なこと全て流してくれるような気がして 何も変えられないこと わかってはいるはずなのに 止めることもできずに周りに当たり散らして いっそみんな死ねばいいと 何もかもどうでもよくなって 大切な人たちをこれでもかと傷つけて 最低だね そうだろ 邪魔なら君が殺してくれよ 迷惑をかけるだけなら 生まれてこなきゃよかったのにね だけど僕がこの人生を今投げ捨ててしまえないのは 君にもう一度会いたいと思ってしまうからかな はいつくばって今日から 少しずつ良くしていかなくちゃ こんなにも腐ったやつだけど 僕はまだ死ねないのさ 誰のせいか 僕のせいか もうどうだっていいことさ 僕はまだ死ねないのさ 生きるのに疲れた日の午後は 君の笑顔が浮かんで消えた
4.
ある朝僕は死んでしまった 確かに生きる希望をなくしていた だけどあんまりに突然さ 横から通り魔に刺されるなんて 毎日死のうかどうかと あんなに悩んでいたのに 気が付いたら雲の上で 盛大に迎えられていた お釈迦様が僕の頭を撫でてくれた キリスト様が向こうで微笑んでいた 天使たちのラッパが軽やかに響いていた あの憂鬱な気持ちも消えた だけど それから僕は天国の 歓迎会とやらに招かれた 苦しむことはもう決してないと みんな慰めてくれたのさ 確かに心は軽くなった おいしそうな食事もある 誰もが幸せそうに見えた だけど何か足りない気がした ハスの葉っぱの上で説法を聞いていた 仏教徒だった覚えもないのにね 口に入れた食事は素晴らしく美味かった 阿弥陀様が微笑んでいた だけど 僕はこんなの望んじゃいない 僕なこんなの望んじゃいない そして僕は気付いたのさ 僕がすべてを失くしたことに 全部どうでもいいと思っていたことが なぜ今こうも懐かしいのか そしてふと今思い出したことは 抱きしめたあの子の温もりさ 天国を降りる階段はとても長くて 僕は途中でへばっていた 後ろでみんなが僕を呼ぶ声がする 下界は苦しみだらけだと でもね 僕はそれでも戻りたいのさ 5分でもいい 戻りたいのさ 1時間を上限に 僕は生き返ることができた 涙を流して喜ぶ家族を見て なんだか切なくなってしまった だけどあの子の姿がない 声はかけたと誰かが言う 急いで車に乗り込んだ あと30分 間に合っておくれ 車に揺られながら色んなことを思い出した 思えば君を傷つけてばかりいたね 僕が死んで君は涙を流したろうか こんな人間の屑のために 驚いて声も出ないその子を 白装束のまま抱きしめた 「ごめんな」と口が動いた これで最後さ 今までありがとう あと2分 どうか自分を責めずに僕を見てくれよ 謝らなきゃいけないことは山ほどあるけど 時間がないからこれだけ言わせてほしい 君に出会えてよかったと そして最後に 君に会えてよかったと お釈迦様が僕の頭を撫でてくれた キリスト様の声がどこかで聞こえた…さよなら
5.
あなたの強さが 私は好きだった あなたの言葉で 私は生きられた あなたの弱さが 私は好きだった あなたの涙に そっとキスをした あなたのぬくもりが 少しずつ消えても 私はこの腕を ずっと離さないよ 私たちの世界に 神様はいない 残酷だけれど 優しいこの世界で あなたのぬくもりが 少しずつ消えても 私はこの腕を ずっと離さないよ あなたは私を 好きだと言ってくれた 私はあなたを そっと抱きしめた あなたのぬくもりが 少しずつ消えてく 私の涙を 拭う人はいない あなたのまぶたが 少しずつ閉じてく 私はあなたを 強く抱きしめた それしか それしか それしかできない それしか それしか それしかできない
6.
別離 04:39
山の奥へと続く砂利道が 僕をどこか遠くへ導いてた 明日のことを忘れて歩いていく 僕はどこか遠くへ消え去りたい 絶望に濡れた君の泣き顔が 頭に浮かんで消えていく お人好しになどなれないから 僕は帰れない 祈るように歩いていく 君のことも忘れたいよ 欲しいものはぬくもりだけ 愛してるという言葉だけ 森の奥へと続く獣道は なんにもできない僕を嘲笑った 大事なものを忘れて進んでいく 君をどこか遠くへ消し去りたい 憎しみに満ちた僕らの恋は タバコの煙にかき消され 嘘をつくこともできないから 僕は帰らない 祈るように歩いていく 僕のことは忘れてくれよ 欲しがるのは寂しいから 愛してると言いたいだけ カラスが闇夜で鳴く頃に 月の光が差し込んで 祈るように歩く僕は 愛し方も忘れてしまったのさ
7.
森の中で 04:41
夜中に 僕と 君は 出かける 二人で 深夜に 車で 遠くへ ラジオは 壊れて 僕らも 壊れた ※そしてそして 僕は君と 森の中へ奥深く 二人きりで出かけてゆく 二人きりで出かけてゆくよ ゆくよ ゆくよ ゆくよ※ 君は 呟く 「僕たち 向こうで」 「もう一度 会えるかな」 「もう一度 会えるかな」 僕は 呟く 「会えたら 幸せだ」 ※repeat※ 深い 眠りが 僕らを 包み込む そしてそして 僕は君と ここでここで二人きり 朽ち果ててゆく朽ち果てる 白い白い骨だけになる なる なる なるんだよ
8.
僕は ずっと見ていた 君も ずっと見ていた 僕は そっと囁いた 君は そっと 目を閉じた 世界の終りに僕は見た 世界の終りに君を見た 神の 声が聞こえた 僕は ずっと聞いてた 君は そっと囁いた 僕の 声は 消えてった 世界の終りに君は見た 世界の終りに僕を見た 僕らは すっと消えてった 世界は そっと 消えてった 世界の終りを 僕らは見た 見たんだ 世界の終りが 僕らを見た 世界の終りに 僕は見た 見たんだ 微笑みを湛えた 君を見た 見たんだ 見た
9.
感傷的な物語は もう終わりを告げ サヨナラを言う友達も もういないんだよ 僕はどこへ帰ろう? かつて夢見た近未来は 跡形もなく消え 君が残した写真にも 僕の姿はない 君はどこへ消えたんだ? ※だけど僕らは 夢の中でなら いつまでも一緒さ そうさ僕らは 思い出の中で いつだって会えるさ※ 明日を語る団欒は もう終わりを告げ 扉を叩く友達も もういないんだよ 君はもう帰らない ※repeat※ だけど君には 夢の中でさえ この歌は届かない でもね僕らは 夢の中でなら いつでも話せるさ 感傷的な物語は もう終わりを告げ サヨナラを言う友達も もういないんだよ…
10.
サヨナラ 06:37
不幸が重なって もう全部嫌になったんだ 世界は壊れて もう全部無意味になったから 僕は 僕は この腕に 「サヨナラ」 って彫ったんだ サヨナラこの世界に サヨナラ僕の未来に サヨナラあの日の希望に サヨナラ信じてた君に サヨナラ サヨナラ サヨナラ サヨナラ 死に場所探して 僕はあの山を目指した 世界は真っ暗で もう僕の居場所なんてないから 僕は 僕は あの山に 「サヨナラ」 しに行くんだ サヨナラこの世界に サヨナラ僕の未来に サヨナラあの日の希望に サヨナラ信じてた君に サヨナラ サヨナラ サヨナラ サヨナラ 立ち寄ったコンビニで 子猫が僕に 僕に寄ってきて こう言われた気がした 「いかないで」 「いかないで」 「いかないで」 「いかないで」って サヨナラしようとしたんだ サヨナラしようとしたんだ だけれどそいつを見てたら サヨナラできなくなったんだ 僕は 僕は 「サヨナラ」を止めたんだ 山の上 午前5時 僕はまた朝を迎えた サヨナラ昨日の僕に オハヨウこれからの僕に オハヨウ この世界に オハヨウ サヨナラ昨日の僕に オハヨウこれからの僕に 腕の傷は消せなくても 僕はまた家へと帰る
11.
気づかないうちに 大人になってしまって 大切な物も どこかに置いて来たんだ そんなことも 忘れていたんだ 僕には見えないものが 君には見えたんだね 大切な物が どこにも見当たらなくて そんなことも 気付かずにいたんだ ここから見えない街に 朝が来るとき 夜空を見上げた僕は 一人で泣いていた 泣いていた 歳ばかりとってさ 心は鈍くなって どうでもいいことに 時間ばかりかけて そんな風に 毎日が過ぎるんだ ここから見えない街に 朝が来るとき 夜空を見上げた僕は 一人で泣いていた 泣いていた 君が残してくれた言葉 僕に少しだけ届いた ここから見えない街に 夜が来るとき 朝日を眺めた僕は やっぱり泣いていた だけど ここから見えない星で 君が笑うなら 夜空を見上げた僕は すこし微笑むだろう 微笑むだろう
12.
話の途中で悪いけど 僕はもう疲れたよ 君が何を言っているのか 全然わからない 明日はすごく寒いって ニュースは言っていたね あの子も今頃寒いって 愚痴っているのかな 傘が要るようになって ずいぶん経つよな 僕はすることなくて 何も出来ない 今僕にあるのは コード進行と ギターを爪弾いてる この指だけ 君に会わないまま 思いだけが 宙を漂うのさ きっと永遠に 下世話な見出しにつられて ちょっと週刊誌を読む あまりに自分が冷めていて 苦笑いする 少しも交わらない僕と 君の暮らしは 平行線を描いて どこまでも伸びてく 僕が忘れたことも 事実の一つで きっと誰かがずっと 覚えてるんだろう 今僕にあるのは 録音データと マウスを動かしてる この腕だけ 君に会わないまま 記憶だけが 宙を漂うのさ たぶん永遠に 君に会えなくなって ずいぶん経つよな 僕はすることなくて タバコふかしてる 今僕にあるのは コード進行と ギターを爪弾いてる この指だけ 君に会わないまま 思いだけが 宙を漂うのさ きっと永遠に
13.
今日も誰かが銃弾に倒れ 幼い子供を親が殺す 空虚なテロリズムに踊らされて 僕らは口を封じられる なぜ こんなに悲しいのだろう こんなに虚しいのだろう なぜ こんなに悔しいのだろう こんなに寂しいのだろう 今日も誰かが自由を叫び 一人二人と倒れていく 無意味なプロパガンダに踊らされて 僕らは手足を縛られる なぜ こんなに醜いのだろう こんなに愚かなのだろう なぜ こんなに卑しいのだろう こんなに無意味なのだろう 歌が世界を変えるとか 愛が地球を救うとか 夢を見るのは簡単だ 人はそれをやめない なぜ こんなに悲しいのだろう こんなに虚しいのだろう なぜ こんなに悔しいのだろう こんなに寂しいのだろう でも 僕らの世界はここだけ 生まれて死ぬのはここだけ あなたがいるのもここだけ 僕らの世界はそれだけ

about

k.TAMAYANこと「玉谷研太」による、13曲入りフルアルバム。
過去作のリメイクやセルフカバーを多数収録し、5曲目「そのぬくもりが」では、Parcodiaの女性ボーカリストである「みっきー」をゲストとして起用。

さらに、3月8日から購入者全員に再ミックスバージョンをプレゼント。
ミキシングによる音の違いも楽しめるようになっている。

かつてないクオリティでお送りする「玉谷ワールド」の集大成が、今ここに誕生した。

credits

released February 1, 2018

mixing&mastering:玉谷研太
jacket design:大脇聡史
photo:北友花

license

all rights reserved

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about

k.TAMAYAN Ishikawa Prefecture, Japan

1992年石川県金沢市で生まれる。
2005年ごろから独学で音楽制作を開始。
2009年よりニコニコ動画を中心に「k.TAMAYAN」名義で活動を開始。動画視聴者から「手書きノートP」の異名を与えられる。
同年9月、小松市立高校の文化祭にてギターによる弾き語りで初のライブ出演を果たす。以降、高校・大学のイベントで弾き語りによるライブ出演を続ける。
2012年にはオリジナルバンド「終末時計」を結成し、筑波大学内を中心にライブ活動を開始。
2017年、終末時計を解散し、AMAX MUSICより「玉谷研太」名義での活動を開始。同年6月、鎌倉FMのラジオ番組にゲスト出演。

また、同年6月7日にAMAX MUSICより、シングル「21世紀の怪物」をリリース。
2018年5月15日より、Vtuber「渚乃奏」の運営を開始。
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